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2013年05月29日 本人が無権代理人を相続

先週「無権代理」の解説をいたしましたので今週は、「本人が無権代理人を相続した場合」の説明をさせて頂きます。
しつこいのですが、来週は、「無権代理人が本人を相続した場合」の説明をさせて頂きます。
無権代理ってちょっと難しいですが、知識としてあると良いと思いますのでお暇な時にお読み頂ければ幸いです。

<メニュー>
■判例の解説
本人が無権代理人を相続
■編集後記


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 判例の解説

それでは判例の解説に入ります。
~最高裁判所 昭和48年7月3日 第三小法廷 判決~
貸金請求事件
~その内容を以下に物語にして説明します。~
登場人物や登場人物が考えた事等は、フィクションです。
遺産相続こんなときあなたは・・・事例をご紹介しております



今回の主人公は、好男さんです。
好男さんの家族は、父親と姉です。
母親は数年前に亡くなっており、姉は結婚して隣の市に住んでいますので好男さんは父親と同居しております。

父親は、たまに姉の家に遊びに行ったりしており家族の仲は、まあまあ良い普通の家族といった感じなのです。
ただし、好男さんは、姉の夫が定職につかずにブラブラして、金銭的にだらしないので、内心嫌いでした。
姉の夫は、好男さんの父親から度々お金を借りていたのです。
好男さんの父親は、お願いされると嫌と言えない性格でしたので借金に応じていましたが、自分の自由に出来るお金が無くなってしまいました。

しかし、姉の夫は、お金が欲しいので、好男さんの父親に銀行から借金する時に連帯保証人になって欲しいとお願いします。
しかし、好男さんの父親には収入がないので、銀行が連帯保証人と認めてくれなさそうです。。

そこで、なんと好男さんを連帯保証人として銀行からお金を借りる事にします。
当然、好男さんは拒否する筈ですので、好男さんの父親が好男さんの代理人として好男さんを連帯保証人とする契約を銀行と結びます。

その後、好男さんの父親は亡くなるのですが、お金にルーズな姉の夫は借金を返す事が出来ません。

困った銀行は、好男さんに支払いを求めます。
好男さんは、そのような要求に応じたくありません。
結局、裁判で争う事になってしまいます。

<銀行の主張>
好男さんの父親は、無権代理人です。
その無権代理人の地位を好男さんは相続しています。
ですので、無権代理人の責任として損害賠償して下さい。

<好男さんの主張>
私は、無権代理された者(以後本人と記述します)です。
本人が無権代理人を相続した場合には無権代理行為が当然に有効とはならないという判例があります。
ですので、私には損害賠償をする義務がありません。

<裁判所の判断>
好男さんの父親は、無権代理人として損害賠償をする責任があります。
好男さんが、無権代理行為(父親が勝手に連帯保証人となる契約を結んだ行為)を拒否出来るからと言って、損害賠償の責任が無くなるわけではありません。
ですので、損害賠償してください。


◆参考文献◆
有悲閣 家族法判例百選第7版 126、127頁
本人が無権代理人を相続した場合と無権代理行為の効力(潮見 佳男)


~補足~
無権代理人が生存中の場合。
『無権代理人』
代理権が無いのに代理人として振る舞う悪者です。
相手方からの「履行」または「損害賠償」を拒否出来ません。

『相手方』
無権代理人のせいで迷惑を被っています。
本人に「追認」するかどうかの確認を行う事ができます。
無権代理人に「履行」または「損害賠償」を請求できます。

『本人』
相手方からの「追認」に対しては、追認拒絶という手段を使えば責任を負う事はありません。

それが、『無権代理人』が亡くなって『本人』が相続してしまうと『本人』には、『無権代理人』としての責任が生じてしまいます。
その事が裁判を難しくさせるのでしょうね。

 編集後記

無権代理って怖いですね。まず、そんな事したら、迷惑を被る人が沢山になるって事を理解しないとですね。


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