相続放棄に関しての判例を解説いたします。
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■判例の解説
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判例の解説
それでは判例の解説に入ります。
~最高裁判所 昭和29年12月24日 第三小法廷 判決~
売掛代金残請求
~その内容を以下に物語にして説明します。~
登場人物や登場人物が考えた事等は、フィクションです。
今回の主人公は、定吉さんです。
定吉さんは、行商をしていましたので、あちこちの地方に出かけていました。
ある地方で、身寄りが無く可哀想な子供と出会いました。
定吉さんは、独身でしたが、跡継ぎが欲しいと思っていましたので養子にする事にしました。
数年後、同じように身寄りが無く可哀想な子供と出会いました。
前回養子にした子供は、自分の跡を継いでくれそうにないのでどうしようかと考えていたところでしたので、その子供も養子にしました。
その後、二人の子供達は、大きくなりましたが、結局どちらも跡継ぎにはなりませんでした。。。
定吉さんは、少し残念でしたが、二人の子供に囲まれて生活できたので幸せでした。
但し、困った事に定吉さんには、借金があったのです。
頑張って返している最中に行商先で亡くなってしまいました。
二人の子供達は、定吉さんの葬儀を行いました。
その後、間をおかずに定吉さんの借金を返済するように二人は請求されますがお金が無いので支払えないと拒否します。
お金を貸した人は、困ってしまいました。
定吉さんが亡くなったばかりで、しつこく催促するのもためらわれましたので数年待ってみました。
しかしお金を返してくれないので借金の支払いを求めて裁判所に訴えました。
二人の子供達は、裁判所からの訴状を見て慌てて、相続放棄を家庭裁判所に申述しました。
当然、相続放棄のできる期間を過ぎていたので、裁判所からの訴状をみて初めて相続人である事を知りましたという事にしたところ家庭裁判所は、相続放棄を受理してくれました。
相続放棄が認められると借金の支払いを求めた裁判も意味が無くなってしまいますので、お金を貸した人は、その相続放棄は無効ですよ!と裁判所に訴えます。
<裁判の結果>
●結論
お金を貸した人の主張が認められました。
●理由
相続放棄が家庭裁判所に受理されたとしても、相続放棄に法律上無効原因があるときには、後日裁判で相続放棄の無効を主張する事ができます。
◆参考文献◆
学陽書房 相続判例205 206頁
相続放棄申述の無効(本橋美智子)
~こうした事を避けるには~
今回の事例では、二人の子供達の法律に関する知識不足が問題だと思います。
借金を返済するように請求された時に、弁護士か相続を専門とする行政書士等に相談すれば良いと思います。
今回の事例に近いケースで困ったパターンとしては、
・ |
親が亡くなり子供が相続人となった |
・ |
親に隠れた借金があった |
・ |
相続放棄できる期間が過ぎてしまった |
というパターンがあります。
このパターンの場合には、遺言書を作成しておけば、相続人が余計なトラブルに巻き込まれる事を回避できる可能性が高いです。
借金というマイナスの財産は、ご本人様が、その情報を残してくれないと調査は、とても大変です。(不可能な場合も考えられます)
遺言書には、自分の財産を分ける指示を記述するだけではなく自分の借金で残された人に迷惑をかける事のないように情報を提供する事もできます。
個人的には、借金の情報こそしっかりと伝えるべきではないかなと思います。