婚外子の相続格差に関して、今日(平成25年9月4日)最高裁判所による判断がされますね。
今回は、婚外子の相続格差についてメールマガジンを書きたいと思います。
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婚外子と非嫡出子(言葉の意味) |
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婚外子の相続格差 |
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婚内子となるには |
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こんな事もありますよ |
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編集後記 |
◆類似記事 「婚外子の相続分って少ないの?」 はこちら
婚外子と非嫡出子(言葉の意味)
婚外子と非嫡出子って同じなのか違うのかおわかりになられますでしょうか?
通常どちらも婚姻関係にない男女間に生まれた子という意味で使用されます。
「じゃあ、婚外子と非嫡出子どちらでも良いのか」と思われますよね?
しかし、問題があります。
嫡出という言葉には、『正統』とか『本流』という意味があります。
つまり非嫡出子と言った場合には『正統な子に非ず』『本流の子に非ず』という意味も含まれるのです。
その為、非嫡出子は、差別的な表現であると考えられています。
「なんだ、婚外子で決まりだね」と思われますよね?
そうなって欲しいのですが、実は民法には嫡出と言う文言が使用されているのです。
法律に記載された文言は仕方ないとして、普段会話等では非嫡出子といった表現をしないように心がけて頂ければ良いなと思います。
少し方向性が異なるのですが、障害者と障がい者にも似た関係があります。
障害者という表現は、害という字が入っていますよね。
なので、実際に体にハンディを抱えた方は、そのような表現を使われるのを好まれていないのです。
障害者は×、障がい者は○という事もあわせて記憶頂ければ嬉しいです。
婚外子の相続格差
相続格差に関しては、皆さん良くご存知だと思いますが、一応記述します。
法定相続分が民法にて以下のように規定されております。
~民法の第九百条四号(抜粋)~
子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一
つまり、相続分が婚外子は婚内子の半分と規定されているのです。
もちろん遺言書や遺産分割協議で法定相続分とは異なる分け方をしても良いのですが、争いになった場合には、法定相続分が適用される事が多いのです。
蛇足ですが、民法の第九百条四号には続きがあります。
~民法の第九百条四号続き(抜粋)~
父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
こちらは、婚外子とは別の話ですが、兄弟姉妹の相続の際にも相続分が二分の一となる場合があるので記載しました。
婚内子となるには
先ほど婚外子とは、”婚姻関係にない男女間に生まれた子”と記述しました。
スルスルと読み進められたかもですが、詳細はどうなっているのでしょうか?
詳細は民法を見て行きたいのですが、民法には婚内子の身分はどうやったら取得できるのかという記述をされております。
そこで、婚内子の身分の取得に関して整理したいと思います。
1. |
何もしなくても婚内子の身分が取得できる場合
多くの方がこのケースに当てはまると思われますが父母が婚姻中に懐妊した子の場合、何もしなくても婚内子となります。
@民法(嫡出の推定)
第七百七十二条 |
妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 |
2 |
婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。 |
※ |
できちゃった婚の場合には、民法の条文上では、婚内子ではないのですが実際は、「嫡出子出生届」により戸籍に「嫡出子」として記載されます。 |
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2. |
子が出生した後の父母の行動によって婚内子となる場合子が生まれた後に”父の認知”と”父母の婚姻”が行われると婚内子となります。
@民法(準正)
第七百八十九条 |
父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。 |
2 |
婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。 |
3 |
前二項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。 |
※ |
”父の認知”と”父母の婚姻”どちらが先でも構いませんが両方揃わなければなりません。
民法の条文上は、両方揃った時点から婚内子となっておりますが実際には、「父母の婚姻」の時点から婚内子扱われます。 |
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3. |
父母以外の行動によって婚内子となる場合養子となった場合に婚内子となります。
@民法(嫡出子の身分の取得)
第八百九条 |
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。 |
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こんな事もありますよ
注意しなければいけないケースをご紹介します。
~ケース~
A子さんは、×男さんと交際 |
↓ |
×男さんの子を出産。 |
↓ |
×男さんに婚姻を迫るが×男さんはどこかに逃げた。 |
↓ |
その後、A子さんは◎夫さんと結婚。 |
↓ |
結婚後、◎夫さんの子を懐妊し出産。 |
↓ |
◎夫さん亡くなる。(相続財産ナシ) |
↓ |
A子さんの始めたビジネスが大当たりして億万長者に! |
↓ |
A子さん亡くなる。(相続財産約12億円) |
↓ |
相続人は「×男さんとの間に出来た子」と「◎夫さんとの間に出来た子」 |
~問題です~
A子さんは遺言書を残しておりませんでしたので法定相続分で分ける事に。
「×男さんとの間に出来た子」と「◎夫さんとの間に出来た子」は幾らずつ相続するでしょうか?
~回答です~
6億円ずつ、、、、ではありません!
「×男さんとの間に出来た子」は、4億円
「◎夫さんとの間に出来た子」は、8億円
なのです。
~解説です~
「×男さんとの間に出来た子」は、婚外子
「◎夫さんとの間に出来た子」は、婚内子
ですので、上記のような相続分となってしまいます。
~対策です~
A子さんは、「×男さんとの間に出来た子」を養子にしておけば良かったのです。
母親が婚内子の身分を与える為に行う事ができるのです。
編集後記
婚外子について熱く語ってしまいました。
ひょっとしたら、最高裁判所の判断で相続における婚外子の概念が無くなるかもですね。
そうしたら、「せっかく読んだのに!」と思われるかもですが、、
とても大きな制度改正が行われるという事を知る良い機会だと思って頂ければ嬉しいです。