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2012年12月19日 公正証書遺言の証人

公正証書遺言書を作成したのに争いが起きてしまった事例をご紹介いたします。
事例の紹介の前に公正証書遺言の作成方法を簡単に説明させて頂きます。

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公正証書遺言の作成方法
■判例の解説
所有権移転登記等抹消登記手続

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 公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言の作成方法は、民法に規定されています。
条文をそのまま読めば、なるほど!という内容ですので、以下に条文を抜粋しますね。

(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
証人二人以上の立会いがあること
遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。
ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
遺産相続こんなときあなたは・・・事例をご紹介しております



少し漢字が多くて読みにくいかもしれませんね。
ですが、なんとなく手順が分かったのではないでしょうか?
ここで、注目して頂きたいのは、線を引きました”証人”に関してです。
”証人”は、誰でも良いものでしょうか?
いえいえ、この”証人”についても民法は規定しています。

こちらも抜粋します。
(証人及び立会人の欠格事由)
第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
未成年者
推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

ここにかかれた人が証人になれないという事は、判例の解説でも出てきますので、その際にまた戻ってご参照いただければと思います。

もうひとつ「公正証書遺言の方式の特則」がありますので、ご紹介します。
これも、漢字は多いのですが、条文を読めば、なんとなくわかるかなと思いますので条文を抜粋します。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。
この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。


 判例の解説

それでは判例の解説に入ります。
~最高裁判所 昭和55年12月4日 第一小法廷 判決~
所有権移転登記等抹消登記手続についての裁判です。
~その内容を以下に物語にして説明します。~
登場人物や登場人物が考えた事等は、フィクションです。


今回の主人公は、木村さんです。
木村さんには、子供がいます。
ですので、木村さんが亡くなった場合には、子供が財産を相続する事になります。
しかし、子供以外の方へ財産を遺したいと考えています。
そこで、木村さんは勉強しました。
・・・ 自分の考える内容を実現するには、公正証書遺言書が良いな!
・・・ 公正証書遺言書を作成するには証人が2名必要なんだぁ。
・・・ 遺言執行者を指名して確実に遺言を実行して貰おう!

早速、木村さんは、吉村さんに遺言執行者になって貰いました。
ついでに証人も吉村さんにお願いしました。
もう一人の証人は、吉村さんの奥さんにお願いすることにしました。

そうして、公証人役場に吉村さん夫妻とでかけて公正証書遺言書を作成しました。

~遺言書の内容~
全財産をお世話になった鬼瓦さんに遺贈する。
遺言執行者には吉村さんを指名する。
などなど

これで安心した木村さんは、それから数年後に亡くなりました。
ところが、木村さんの不動産を木村さんの子供が自分へ所有権を移転してしまったのです。
これでは、木村さんの遺言を執行できない為、吉村さんは、所有権移転の取り消しを求めて裁判所に訴えました。
そうしましたところ、木村さんの子供は
吉村さんは、目が見えない人なので証人として不適格と思われます。
証人が不適格であるので、遺言は無効です。
と主張しました。

<裁判の結果>
「盲人は、公正証書遺言に立ち会う証人としての適格を有する。」

◆参考文献◆
有悲閣 家族法判例百選第7版 168、169頁
公正証書遺言書の方式ー盲人の証人適格(大島俊之)



~個人的な感想~
当時は、盲人の方が証人として適格であるかについては判例も無く学者先生の大半は、盲人の方が証人として適格では無いと主張されていたようです。
そのような状況の認識があれば、証人を別な方にお願いする事で大きなトラブルは防げたのかなと思います。
しかし、おかげでとても貴重な判例を得て、他の人の役に立つことになったので、感謝しなければいけませんね。
一番大変だったのは、証人をお願いされた方とその奥様だと思います。
遺言執行者としての仕事をきちんと行なう為に、裁判所に訴えを提起され最後まで頑張って裁判をされた事は、とても尊敬できます。
裁判の途中で証人をお願いされた方は亡くなり、奥様がその後を引き継いで裁判をされています。本当に偉いご夫婦だと思います。


~こうした事を防げないか?~
一番の問題は、相続人の遺留分を侵害する遺言書を作成した事とその相続人に対してのケアが足りなかったのではないかと思われます。
相続できる財産があると思った時、ほとんどの人は、財産を貰いたいと考えるハズです。
その事を考慮して、遺言書を作成するようにしていれば、争いは防げたかもしれませんね。


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