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■判例の解説
遺言無効確認(自筆証書遺言の押印の要件)
◆類似記事 「続せっかく遺言書を書いたのに~」 はこちら
判例の解説
自筆証書遺言の押印の要件が争われた事例を解説させて頂きます。
~最高裁判所 平成6年06月24日 第二小法廷 判決~
自筆証書遺言書に本文の自署名下には押印をしなかったが、自筆証書遺言書を入れた封筒の封じ目に押印した場合の遺言書の効力についての裁判です。
~その内容を以下に物語にして説明します。~
争われた遺言書の押印に関する内容以外は、全くのフィクションです。ですので、自分の名前と同じだ!などびっくりしないで下さいね。
山田晴男さんは、妻と子供に囲まれて平穏な日々を送っていましたが妻が病死してしまいました。
晴男さんは、深い悲しみの日々を送っていましたが、明美さんと知り合い、心が癒され、明るさを取り戻していきました。
その後、二人は結婚し、幸せな日々を送っておりました。
更に月日が流れて、晴男さんは幸せな最期を迎える事ができました。
しかし、遺された遺族(明美さんと前妻の子達)は、とても険悪な関係になってしまいました。
それは、晴男さんの残した遺言書が原因だったのです。
<明美さん側の視点>
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その遺言書は、本当に晴男さんが書いたの? |
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私に遺される分がこんなに少ないはずはないと思う。 |
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そもそも遺言書に押印してないから、遺言書としては無効では? |
<前妻の子達の視点>
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お父さんは、自分達の事も心配してくれたんだな。 |
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おとうさんの気持ちを守って遺言書どうりに遺産分割しなきゃ! |
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遺言書を入れた封筒にきちんと押印されているので有効ですよね? |
結局、裁判で争う事になってしまいます。
結果ですが(最高裁判所まで争った結果)
遺言書が山田晴男さんの書かれたものであると認められる事や遺言書を入れた封筒の封じ目の左右に押印されている事などから、山田晴男さんの遺言書と認められる事になりました。
~こうした争いを防げないか?~
●自筆証書遺言書の書き方に細心の注意を払う
まず、自筆証書遺言の書き方は、民法に規定があります。
【民法】
第九百六十八条 |
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 |
2 |
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。 |
次に判例ですが
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特別な事情がある場合にのみ例外的に押印を不要とする判例 |
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指印(拇印)を認める判例 |
など、押印の要件を緩和した判例もあります。
個人的な意見ですが
判例にあるからという考え方ではなく遺族が裁判で争わないように、出来る限りの事をしておいたほうが良いと思います。
そこで、自筆証書遺言の押印は以下のように!
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署名の隣に実印で押印する。 |
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遺言書を入れた封筒の糊付けした箇所に実印で押印する。 |
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印鑑証明書を添付する。 |
※今回は、押印の問題ですので押印に限定した記述で。
●遺言書に遺族へのメッセージを書く
遺族への感謝の気持ちと共に、自分はどうしてこんな感じに遺産を分割して貰いたいのかを遺族に理解してもらえるように分かりやすく優しくメッセージを書かれては、如何でしょうか?
遺言書に、家は妻に預金は長男に次男には無しとだけ記載されていると、本当にお父さんが書いたの?なんで??って遺族が混乱するかもしれませんので、是非お書き頂ければと思います。
◆参考文献◆
有悲閣 家族法判例百選第7版 164、165頁
自筆証書遺言の方式ー押印(松原正明)